つぶやくdorotanuki

小さい穴から見える外界の様、過ぎる時代への雑感をつぶやく

2019年11月20日(水) ある日の湘南平雑記

 

湘南平は地元の桜の名所として賑わい、自分にとっては以前レンジャクを撮りたくて通っていた時期があり、家からも近いので、まだ早そうだが紅葉と野鳥を見に出かける事にした。

この日は曇りだが寒さは思ったほどでは無く、頂上駐車場からの街並みが広がる景色なども楽しめた。

メジロ鳴き 冬雲走る 湘南平

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ハイキングコースが有るので、ハイキングに来たつもりで以前、野鳥を見た場所に行くことにする。

平日なりの人出、頂上の公園で遊ぶ親子連れや山道を歩く高齢者、中には走る人も見かけたが、カメラを抱えた人間はほかに居らず、野鳥撮影には時期が違ったようだ。

広角と望遠、三脚を持ち山道を降りたり登ったり、汗だくになったが結果、野鳥は撮れず。最初メジロの囀りや何かが木を突くような音など野鳥の気配は有ったのに、姿は捉えられずじまいで終わった。残念、声はすれども姿は見えず、の鳥たちだった。

頂上広場から一旦下ってまた登ったところに小さな神社がある。メタリックな鳥居の神社だがその脇に放置された様に見えるベンチがあり、何故か気になった。

●たれ座すや 冬樹の森に バンコあり ※バンコ:ポルトガル語でベンチ

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このベンチのほかに木製のテーブルと椅子の休憩場所もありほとんどの人はそっちに座る。このベンチ、バンコは一人静かに座りたい人間を待っているのだろうか、或いはあの世以外行き先の無い自分のためにあるのか?

昼間は良いが夜一人で座っているのは勇気がいるなあ、と思う、まずそんな人は居ないだろうけど。

途中で気づいたのはヤブランの黒い実が沢山生っていること、確かレンジャクはこの実をついばみにやって来ると聞いたので、もしかしたら居るのだろうか?と期待もしたし、通りがかった年配の人が連雀はいましたか?と聞いてきたので余計にワクワクした。しかし帰って以前の写真を見たら撮影月は3月になっており、まだ渡りは始まっていない時期のようだ。せめてヤブランの黒い実を望遠でマクロ風に撮影してみた。

●連雀の 声まだ聞かずか ヤブラン

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2015年3月の撮影、尾羽の先が黄色いキレンジャク。3月までヤブランの実が有ったのかは不明。

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山道の途中で見かけた赤い実も中々可愛らしく野鳥が啄みに来そうだなあとの勝手な思いで周りを見渡した。

この赤い実はガマズミという木の実らしい、検索して出てきた写真がよく似ていた。残念ながらまだ熟れきっていないためか時間帯のせいか、一羽の野鳥も姿を見せなかった。実は熟れてくると粉をふくとの記載あり。

●ガマズミの 実りさびしき 冬野原

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木々の中を歩くのは気持ちが良い。沢山の自分と同年代やもう少し年配の人達も、結構急な坂もあるこのハイキングコースに集うのは、登りはきつくても森の中の息のしやすさがあるからでは、と思う。

二人連れや小グループのハイキングを楽しむ人が静かに、あるいは楽しげに落ち葉を踏んで通り過ぎていく。

●風月も 重ね踏みしむ クヌギ

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見上げると、青い空も白い雲も抱え上げるように枝を集める森の木達。葉先で空と繋がっていく。

●枝伸ばし 天空支えし 冬木立

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今日は諦めて帰ろうと思い山道を戻っていると山際に白い花が見えた。何の花か分からず撮影後モニターで見直すと何と白い紫陽花の花だった。これはどういうことなんだろうか?写真には「11月の紫陽花」とタイトルをつけよう。

●狂い咲く 白き紫陽花 冬山路

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フウフウ言いながら頂上の広場に戻って海側を見やると、広場の端にある大きめの枝を広げた木が気に入り、何枚か撮影。

後で見返すと子供と母親らしき女性の走る姿が映っていた。

●待て待て待て ふたつの影抱く 小春日よ

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曇り空の下、昼間の太陽が雲に隠れて柔らかな光を振りまいている。こんな枝を広げ子供を包み込むような木もあり、空に向かって伸び上がり天を穿つ様な大木もあった。

どちらも今を生きている、見上げる自分や枝の下を駆け抜ける母娘をどんな風に見ているのだろうかこの木々は。

●中天へ 体突き上げ 巨樹の吠ゆ

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森のなかにはまるで印象派の絵のように見える姿の木もあった。よく見ると木の幹に絡みついた蔦の葉がまるで点描か、柔らかく筆でぼかした様な効果を見せてくれていた。

●纏う蔦 秋の絵の具に 踊り立つ

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頂上の広場にはひときわ高く聳える湘南平のシンボル、テレビ塔がある。

●冬空に 目の玉二つ テレビ塔

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●高みより 蟹が見上げる 冬の青

※塔のてっぺんには避雷針と二個のライトが付いている。まるで蟹の顔にも見えた。

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野鳥には遭遇せず撮影も出来なかったが、いつも通り過ぎていた景色を再確認できて良かった。

また機会を見て歩けなくなる前に来ようと思う。